リフォームしたての住宅やアパートが原因で体調を崩す「シックハウス症候群」。

 新しい建材に使われている合板や壁紙の接着剤から放散される揮発性の化学物質を吸い込むことが原因で吐き気や頭痛、皮膚炎などの体調不良が起こる症状です。

 湿気やダニ、カビなどシックハウスの原因は様々ですが、近年エアコンの効率を重視した機密性の高い住宅が増えたことで、特に建材によるシックハウスの症例が頻発。

2003年には建築基準法が改訂され、特に人体に有害な化学物質「ホルムアルデヒド」が規制され、それ以降に建てられる住宅やアパートでは24時間換気が義務化されました。

とはいえ、一般的な建材には微量であっても化学物質を含む接着剤や塗料、防カビ剤などが使用されている上、24時間換気でも室内の空気を完全に入れ替えることは難しいため、どうしても室内環境が汚染されてしまっているのが現状です。

室内で化学物質を吸い込むことで発症するシックハウス症候群に加え、体内に取り込んだ化学物質が身体のキャパを超えた時に発症する「化学物質過敏症(CS)」になってしまうと、ごくごく微量の化学物質や匂いに激しく反応し、日常生活を送ることが非常に困難になってしまいます。

 そのため、日常的に取り込む化学物質を減らすためにシックハウス症候群や化学物質過敏症対策を施した住宅(いわゆるオーガニックハウスや無添加住宅)を新築したり、リフォームする人が増えています。

 そんな中、需要が高まると考えられるのが賃貸物件。予算や時間だけでなく、様々な理由から賃貸を選ばざるを得ない方々の中にも、自分の住環境を良くしたいと考えている人は少なくないと思います。

 

そこで今回はシックハウス症候群や化学物質過敏症対策の賃貸物件はどんな人に求められているのか、について考察してみます。

 

 

シックハウスやCS対策の賃貸物件を必要とする人たち

日本では60年代ごろから現在に至るまで、持ち家と賃貸の割合はおおよそで持ち家60%、賃貸40%とほぼ変わらず推移していますが、単身世帯が増えるにつえてわずかづつ賃貸の割合が増えていくと予想されています。

 しかし、一般的に賃貸物件で使われる建材やシステムキッチンなどの素材は、作業効率や工期、コストの面から化学物質を含んでいて、決して身体に良いとは言えません。

 もちろん、ほとんどの場合は国の基準に乗っ取り「身体に害のない」レベルの建材ですが、それでも身体に蓄積されると考えるとできれば健康志向のお部屋に住みたいな、という人は多いのではないでしょうか。

 

具体的に、どういった人たちにシックハウスやCS対策の賃貸物件が求められているのかを挙げてみます。

 

健康志向の単身者

 

まずは、健康志向の単身者。 

オーガニック食品を好んだり、適度に運動もしてできるだけ自然派に近い生活を心がけている方にとっては、シックハウスやCS対策の賃貸物件はとても魅力的です。

 むしろ、せっかく生活に気をつけているのに住環境が良くないというのは勿体無いと感じます。

 都市部で働く単身者は通勤などのストレスも多い上、賃貸物件で暮らしている人が大多数だと思いますが、家の中では身体にストレスをかけない生活が送れたら、QOLも上がっていくのではないでしょうか。

 

ペットと暮らす人

 

最近ではペット可の賃貸物件も増え、愛犬や愛猫と一緒に暮らしている人も多いと思います。

 しかし、「【シックハウス対策】フードだけじゃない!愛犬・愛猫のアレルギーやアトピーを防ぐ住環境とは」でもご紹介したように、ほとんどの時間を室内の床に近い場所で暮らすペットは、大人の人間よりも化学物質の影響を受けやすいと言われています。

 実際、人間には何も影響がない住環境でもなぜか愛犬や愛猫がアトピー性皮膚炎になってしまい、原因を探るうちにシックハウス症候群が判明した、という事例も数多くあります。

 大切な家族が苦しむ姿を見たくない、というのはもちろんですが、人間の子供のように医療費の補助がないペットの犬や猫は、一度病気になってしまうと多額の治療費がかかってしまいます。

 ペット可でさらにシックハウスやCS対策の賃貸物件が増えれば、そこで愛犬や愛猫など大切なペットと健康に暮らしたいと願う人は多いと思います。

 

転勤が多い子育て世帯

 

子育て世代ではマイホームを持つ世帯も多いですが、仕事によっては転勤が多く賃貸で数年おきに引っ越しを繰り返す、という家族も少なくはありません。

 しかし、赤ちゃんや子供もやはり家で過ごす時間が長く、床に近いところにいるため、化学物質の影響を受けやすい存在。

 

関連記事:赤ちゃんはシックハウスになりやすい!新築や賃貸でこんな症状が出たら要注意

 

近年は柔軟剤や消毒剤など、身の回りにも化学物質が溢れているため、保育園や学校でもシックハウス症候群や化学物質過敏症を発症する子供が問題になっていますが、当然普段暮らしている住環境も子供に与える影響は大きいです。

 転勤で引っ越しをする先に、安心して暮らせる賃貸物件があれば、仕事も家族の生活も穏やかに送れそうです。

 

リタイア後のシルバー世代

 

定年退職や子供の巣立ちを機に、広い持ち家からコンパクトな賃貸に居を移すリタイア後のシルバー世帯にも、シックハウスやCS対策の賃貸物へのニーズがあると考えられます。

 というのも、現役に比べて家で過ごすことが多いリタイア後の世代や、免疫が落ちてきがちな高齢者もまた、シックハウス症候群になるリスクが高いとのこと。

 せっかくの人生の新しいステージ、健康に暮らすために住環境にもこだわって賃貸を選べるようになるといいですよね。

 

シックハウス症候群や化学物質過敏症の一時避難

 

新築やリフォームしたての物件に入居してシックハウス症候群になってしまった人や、普段からの化学物質の蓄積で過敏症になってしまった人たちは、リフォームや引っ越しを余儀なくされる場合もあります。

 特に化学物質過敏症を発症してしまうと、激しい頭痛や吐き気、倦怠感、不眠、うつ病など日常生活を送れないほど激しい症状が出てしまうこともあり、一刻も早く環境を変えることが必要。

 現代の生活にはありとあらゆるところに化学物質が使われていて(柔軟剤、消臭剤、防虫剤など)いつ誰が発症してもおかしくないと言われているため、急に発症してしまった患者さんたちが一時的に避難できるような短期型の賃貸物件も、今後需要が増えていくと考えられます。

 

シックハウスやCS対策の賃貸物件へのリフォーム

今ある賃貸物件をシックハウスやCS対策の賃貸物件に変えるには、リフォームが必要。

 予算や物件の状態にもよりますが、屋根と骨組みだけを残して全てフルリフォームをする「スケルトンリ

ォーム」から、内装だけを可能な限り安全な素材に作り替えるリフォーム、床だけのリフォームなどいく

つかのパターンが想定されます。

 

関連記事:化学物質過敏症(CS)対策|賃貸物件のリフォームでオーガニック・無添加物件に

 

ただ、化学物質過敏症は原因となる物質も様々、症状も人それぞれなため、全ての患者さんに対応した

物件を用意することは難しいという課題があります。

 可能であれば、複数のお部屋をいくつかの対処パターンを応用してリフォームし、バリエーションを

持たせて選択肢を提供できるようにする、お試し期間を設けるなどの対策をすると良いかと思います。

 

まとめ

 

今回はシックハウス症候群や化学物質過敏症対策の賃貸物件はどんな人に求められているのか、

について考察してみました。

 

 数十年前には珍しかった花粉症が今ではポピュラーな疾患になったように、これから数年後には

化学物質過敏症に罹患する人も多くなっていくと言われています。

 

 そうならないために、日常生活レベルでの化学物質を減らす努力とともに、住環境の見直し、

発症してしまった場合の受け皿の確保など、社会的に取り組んでいく必要があるのではないでしょうか。

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