住宅やオフィスなど、室内環境の空気汚染によって引き起こされるシックハウス症候群。

頭痛や吐き気、目・喉の痛み、不眠など様々な不調からアレルギーアトピーなど慢性的な疾患にもつながる厄介な病気です。

住宅の気密性が上がり、エアコン効率がよくなった反面、室内の空気循環が悪くなったことから近年問題になっているシックハウス(=病気をもたらす家)ですが、その主な原因のひとつが、建築資材や塗料から発散される揮発性の化学物質(VOC:揮発性有機化合物)です。

空気中のVOCは目に見えないため、どんなものにどんな化学物質が使われている可能性があり、それらが身体にもたらす影響はなんなのか、知っておくことで対策することができます。

こで今回は、シックハウス症候群の原因となる化学物質とそれが含まれるもの、そして身体への影響についてまとめました。

シックハウス症候群の原因となる化学物質

シックハウス症候群の原因となりうる化学物質について、厚生労働省が2019年までに定めた指標(室内濃度指針値)には、13種類の物質が挙げられています。

ホルムアルデヒド

アセトアルデヒド

トルエン

キシレン

エチルベンゼン

スチレン

パラジクロロベンゼン

テトラデカン

クロルピリホス

フェノブカルブ

ダイアジノン

フタル酸ジ-n-ブチル

フタル酸ジ-2-エチルヘキシル

普段の生活では聞きなれない名前の物質もあり、これらの物質が身近にあるというのがなかなか想像しにくいですよね。

VOC(揮発性有機化合物)は全部で200種類ありますが、そのうちの13種類が特にシックハウスの原因になり得るとのことで、空気中の濃度に指針が示され、制限されています。

しかし、生活の中で実際には、指針に入っていない化学物質も存在しています。

トリクロサン

リン酸トリクレジル

トリハロメタン

ブタジェンゴム

ナフタリン

テトラクロロエチレン

フェニトロチン

フェンチオン

到底覚えきれそうにない名称ばかりですが(トリハロメタンとナフタリンはちょっと馴染みがある名前かな?)、要するに私たちの生活の中には多くの化学物質があるということですね。

シックハウスの原因VOCを含むもの

普段気が付かない間に身近にあるかもしれないVOC、どんなところに使われているのか、表にしてみます。

ホルムアルデヒド

接着剤・塗料・建材

アセトアルデヒド

接着剤・塗料・煙草の煙・食品添加物

トルエン

接着剤・塗料・家具・インキ溶剤

キシレン

接着剤・塗料・家具

エチルベンゼン

洗浄剤・有機合成・溶剤・希釈剤

スチレン

ポリスチレン樹脂(カーペット)・不飽和ポリエステル樹脂・AS樹脂・合成樹脂塗料

パラジクロロベンゼン

衣類の防虫剤・トイレの芳香剤

テトラデカン

灯油や塗料等の溶剤

クロルピリホス

殺虫剤・防虫剤・防蟻剤

フェノブカルブ

防虫剤・防蟻剤

ダイアジノン

殺虫剤・防虫剤

フタル酸ジ-n-ブチル

印刷インクや接着剤の添加剤・壁紙や床材の可塑剤

フタル酸ジ-2-エチルヘキシル

壁紙や床材等の可塑剤

トリクロサン

薬用石鹸・シャンプー・洗剤・化粧品・練り歯磨き粉・防臭剤

リン酸トリクレジル

塩化ビニール・電線コンパウンド

トリハロメタン

水道水

ブタジェンゴム

ゴムマット・窓枠

ナフタリン

防虫剤・染料

テトラクロロエチレン

ドライクリーニング溶剤

フェニトロチオン

農薬・殺虫剤・防虫剤

フェンチオン

農薬・殺虫剤

様々な化学物質が生活の中にあることが分かりますが、大きく分けると以下のようになります。

・建材:接着剤・塗料

・クロス:カーテン・カーペット・塩化ビニール

・虫対策:殺虫剤・防虫剤

・洗浄:洗剤・芳香剤・消臭剤・石鹸

 

建築で使われる接着剤・塗料

建築では、一見そんなに接着剤を使っているイメージはないかもしれませんが、フローリングや建具、壁・屋根・床などの下地材として使われる建築用構造の合板は、薄くスライスした板を何枚も接着して作られるため大量の接着剤が使われています。

 同様に、システムキッチンや洗面台などの造り付け家具や棚なども合板で作られていることが多いため、接着剤が使われます。

 また、壁紙を貼る際にも接着剤が使われ、フローリングや床材も接着されています。

 塗装に関しても、壁や建具、外壁などいろんな場所で使用されていますよね。

 シックハウス症候群の最も大きい原因と言われるホルムアルデヒドについては、安全基準としてFマークが付けられていて、F☆☆☆☆(Fフォースター)が最もホルムアルデヒドの放散が少なく安全に近いとされています。

そのため建材や家具などを選ぶ際にはF☆☆☆☆のマークがあるものを選ぶことが大切。とはいえ、F☆☆☆☆であっても微量のホルムアルデヒドは含まれているので、それが積み重なることで身体が受ける影響というのは考慮する必要があります。

また、F☆☆☆☆マークはあくまでホルムアルデヒドについてのみの基準のため、それ以外のVOCがどのくらい含まれているのかについては不明です。

弊社では、安全と言われているF☆☆☆☆マークであっても合板は使用せず、天然無垢材と化学成分を含まないでんぷん糊を使った家づくりをしています。

また、安心安全な無垢材を使った家具の制作や、ホーロー・金属のキッチン設置など、シックハウス症候群の原因となる化学物質を可能な限り排除する提案を行っています。

 

クロスで使われる化学繊維・塩化ビニール

 カーテンや絨毯からもシックハウス症候群を引き起こす化学物質が放散される恐れがあります。

 化学繊維や合成ゴムなどを使用しない、ウールやジュート(朝)、コットンなどの天然素材のカーテンや絨毯、ラグなどを選ぶことで、目に見えないリスクを減らすことができます。

 

防虫剤・殺虫剤

 防虫剤や殺虫剤も生活の中で気軽に使ってしまいがちですよね。

衣替えのたびに衣類用の防虫剤を箪笥に入れたり、夏には蚊への対策スプレーを使ったり・・・。

 私ごとですが、以前実家に帰った際、普段使わない部屋で就寝したところ喉の痛みと息苦しさで目が覚めたことがあります。

 とても寝られる状態ではなかったため、別の部屋に移ったところ楽になって朝まで寝ることができたのですが、後で聞くと、母が良かれと思って殺虫剤(G対策)を大量に部屋に置いてくれていたのです。

 締め切った部屋で、その成分が充満し、身体に異変が起きてしまったことで、改めて殺虫剤の成分の強さと恐ろしさを知りました。

 最近では防虫剤の代わりに自然派のアロマを生活に取り入れる人も増えています。

また、建築で使われるヒノキやヒバ、クスノキにも防ダニ・防虫効果があることが知られていて、自然素材の家は虫除け効果があると言われています。

 

化学成分や強い殺傷成分を含まず防虫効果がある天然素材を取り入れて、快適に過ごしたいですね。

 

芳香剤・消臭剤

トイレの消臭剤や芳香剤にも、化学物質が含まれるものが多くあります。

気になる匂いを消せたとて、芳香剤の匂いを思いっきり吸い込みたいと思う人はあまりいないのではないでしょうか。なんとなく身体にいいイメージはありませんよね。

ヒノキや炭など消臭効果のある天然素材や、植物性のアロマなどを上手に利用して、いつでも安心して呼吸ができる空間作りを心がけてみてください。

 

シックハウス症候群の原因VOCで出る症状

シックハウス症候群の症状は人それぞれで、体質や体調によっても異なります。

同じ空間にいても化学物質の匂いが気になる人もいれば、全く感じない人もいて、感じないからといって症状が出ないとも限りません。

また、どの化学物資質に誰が敏感かというのも人それぞれのため、家族内でも別の症状が出たり、別のものが原因になっていることもあるのがシックハウス症候群の難しいところです。

前項で挙げたVOCを多く摂取することで現れる症状をまとめてみましたので、該当する症状があれば、使っているものの素材や建材について成分を調べてみてもいいかもしれません。

 

接着剤・塗料系

ホルムアルデヒド
(発がん性物質)

目・鼻・喉への刺激、流涙、くしゃみ、咳、吐き気

アセトアルデヒド

眼・鼻・喉への刺激、結膜炎、眼のかすみ

トルエン

目・気道への刺激、精神錯乱、疲労、吐き気

キシレン

喉の乾燥感、出生児の中枢神経発達への影響

フタル酸ジ-n-ブチル

眼・皮膚・気道への刺激

フタル酸ジ-2-エチルヘキシル

眼・皮膚・気道への刺激、消化管へ影響

テトラデカン

麻酔作用

クロス類

スチレン

眼・皮膚・粘膜への刺激、中枢神経作用、眠気、脱力感

リン酸トリクレジル

胃腸障害、手足の麻痺

ブタジェンゴム

眼、粘膜障害

虫対策

パラジクロロベンゼン

眼・皮膚・気道への刺激、肝臓・腎臓の機能低下及び損傷

クロルピリホス

倦怠感、違和感、頭痛、めまい、胸部圧迫感、不安感

フェノブカルブ

倦怠感、頭痛、めまい、悪心、嘔吐、腹痛

ダイアジノン

倦怠感、違和感、頭痛、めまい、胸部圧迫感、不安感

ナフタリン

皮膚・目・粘膜への刺激  

フェニトロチオン

神経毒性・眼毒性・免疫力低下

フェンチオン

発ガン性疑惑・胎児毒性・ 神経毒性

洗浄・消臭・芳香剤

エチルベンゼン

喉・眼への刺激、めまい、意識低下

トリクロサン

発疹、めまい

テトラクロロエチレン

中枢神経作用・肝臓・腎臓障害

その他

トリハロメタン

うつ病状態、食欲不振、幻覚

 

多くの場合、目や粘膜、喉・気道に刺激を感じたり、めまいがすることがあるようです。

また、直接的な刺激だけでなく、継続的に化学物質を吸入することでアレルギーを発症しアトピー性皮膚炎になったり、不眠症や肺炎などの症状を併発することもあります。

特に新築やリフォームしたての家やアパート、壁紙を張り替えた後などに目がチカチカする、喉がイガイガする、吐き気がするといった症状が出たら、シックハウス症候群を疑ってもいいかもしれません。

不快な症状を感じたら、まずは眼科や耳鼻咽喉科など直接の症状に関連する医療機関を受診し、必要に応じてアレルギー科で住環境や生活習慣についての問診を受けてみてください。

このように、様々な体調不良を引き起こすシックハウスですが、原因となるVOCを取り除くことで症状が緩和したり回復する場合が多く、対策することが可能です。

建材や家具のVOCを軽減するエイブル工法や、でんぷん糊など天然素材を使った家づくりについて、専門の知識と経験豊富な磯﨑工務店にお気軽にご相談ください。