喉の痛みや頭痛でどうも調子が悪い・・・、風邪薬を飲んでも横になって休んでもなかなか良くならない・・・、そんな時に疑われる病気のひとつに、化学物質過敏症があります。

その名の通り、化学物質に過敏に反応して身体に不調が出てしまう症状のことですが、現れる症状は新築住宅やリフォームが原因で現れるシックハウス症候群ととてもよく似ています。

ただ、同じような症状が出ていても自分が「化学物質過敏症」なのか「シックハウス症候群」なのかによって、原因や対処法が異なる場合もあるので、違いを把握し対処することがとても大切。

そこで今回は、化学物質過敏症とシックハウス症候群の違いと、住宅での対策についてまとめてみようと思います。

 

化学物質過敏症とは?

 

化学物質過敏症は、通常の人であれば症状を出さないような微量な環境中の化学物質に反応して、種々の多彩な症状を訴える病態のことで、「過去にかなり大量の化学物質に一度曝露された後,または長期間慢性的に化学物質の曝露を受けた後,非常に微量の化学物質に再接触した際にみられる不快な臨床症状」(Cullen, 1987)と定義されています(参照:日本衛生学会)。 

国際的には MCS(Multiple Chemical Sensitivity)と表記されますが、日本では独自の診断基準が設けられ、 CS(Chemical Sensitivity)という名称が一般的に使われていて、国際的なMCSとは異なる概念とされています。 

国際的にも日本でも、まだ解明されていない部分も多く研究段階にある疾患で、特に日本では海外に比べて認知度も低いですが、アメリカでは10人に1人は化学物質過敏症だと言われています。

 

化学物質過敏症の原因

化学物質過敏症を引き起こす原因となるのは、生活の中にある化学物質。

 

  • 新築や改装などで使用される建材、塗料、接着剤から放散される化学物質
  • 家庭用の殺虫剤や防虫剤
  • 芳香剤
  • たばこの煙
  • 衣料用洗剤・柔軟仕上げ剤
  • シャンプー・整髪剤
  • 化粧品
  • 香水など

 

香り・匂いによって誘発される場合が多いため、「香害」とも呼ばれ、過敏症でない人にとっては

気にならない成分でも、過敏な人にはつらい症状が現れます。

例えばタバコの匂いは過敏症でなくても非喫煙者にとって不快なものですが、喫煙者でも芳香剤の

匂いに過敏に反応が出てしまう人も居るように、体調不良をもたらす原因がひとそれぞれ。

 

一つ屋根の下生活する家族であっても、誰かが好んでいる柔軟剤の匂いが誰かにとっては有害

ということもあり得る上に、ずっと問題なく使っていたのにある日突然発症することもあるため、

因果関係を突き止めることがとても難しいのだとか。

 

化学物質の放散は目に見えず、人によって受ける影響や現れる症状も異なるため、なかなか周囲に

理解されにくい厄介な疾患・・・、それが化学物質過敏症なのです。

 

そのため、不特定多数の人が集まる場所にいく際などは、香りが強い香水は控える、スプレータイプ

の制汗剤や日焼け止め・虫除けが周囲に飛び散らないようにする、などの配慮が求められています。

 

化学物質過敏症の症状

 

化学物質過敏症で現れる症状には、以下のようなものが挙げられます。

 

  • 結膜炎・鼻炎・のどの痛み
  • 皮膚炎
  • 冷や汗、手足の冷え、頭痛、疲れやすい
  • 内耳障害(めまい、ふらつき、耳鳴り)
  • 循環器障害(動悸、不整脈、血行不良)
  • 消化器障害(下痢、便秘、悪心)
  • 眼科的障害(目がちかちかする、目が見えにくい)
  • 精神障害(不眠、不安、うつ症状、不定愁訴)

 

その他にも、全身倦怠感、筋肉痛、肩こり、喘息、けいれん、湿疹、気管支炎、咽頭炎などが起こる

と言われています。

 

少し体調が悪い時に起こりがちな症状から、風邪のような症状、疲れが取れない、お腹の調子が

悪いなど、症状が多岐に渡っているためなかなか「化学物質過敏症」という診断まで辿り着けない

ことも多いそう。

 

また、症状が重篤になるとアレルギーや喘息を発症したり、慢性的な体調不良・精神疾患を患って

社会生活を送ることが困難になることもあります。

 

化学物質過敏症の診断

 

前項で挙げたような症状が現れて続く場合、まずは最寄りの医療機関の内科、小児科、アレルギー科、

耳鼻咽喉科、皮膚科など、症状に応じた専門医に相談を。

 

化学物質過敏症では血液検査や尿検査などの一般的な検査では異常が見つからないことも多く、

問診で、

 

いつからどのような症状が起きたか

これまでの病気、住居や周囲の状況

職業

住宅の環境

食事習慣

過敏に反応するものは何か

詳細な症状

 

など、さまざまな項目について詳しく調べる過程で化学物質過敏症を疑い、発症時期や原因を探って

いくことになります。

 

化学物質過敏症の定義にもあるように、化学物質の許容キャパオーバーで発症するため、きっかけと

なるタイミングが分かりにくいのも特徴のひとつ。

 

診断基準は、頭痛、倦怠感・疲労感、筋肉痛、関節痛の4つの主要症状のうち1つ以上と検査所見

および精神的影響や皮膚状態などの軽微な症状が組み合わされていること

(参照:化学物質過敏症” (PDF). 石川哲)で、2009年に保険適用されることが厚生労働省から

発表されました。

 

ただ、診察を受けても自律神経失調症や精神疾患、更年期障害など、別の診断名が付くことも少なく

ないようです。

 

シックハウス症候群とは?

シックハウス症候群は、住居に由来する様々な健康障害の総称で、住居を離れると症状が軽くなるのが

特徴です。

 

シックハウス症候群の原因

 

シックハウス症候群は住居やオフィスなどの”室内でのみ”発症する健康被害なので、原因は室内環境に

あります。

 

  • 住宅建材や家具に使われている合板の接着剤や塗料
  • 白アリ駆除剤
  • ダニアレルゲン
  • ハウスダスト
  • カビの胞子
  • 細菌
  • 衣類の防虫剤
  • 芳香剤
  • タバコ
  • ヘアスプレー
  • 殺虫剤
  • 石油ファンヒーター
  • 一酸化炭素・二酸化炭素 など

 

特に、住宅の内装、家具やフローリングなどの接着剤や建材に多く使われるホルムアルデヒドは、

シックハウス症候群の主な原因の一つ。

床の下地材などにも使われることも多く、気づかないうちに室内に放散されます。

 

化学物質過敏症との大きな違いは、原因となる物質が科学的な物質だけでなく、ダニやカビなどの

有機物も含まれるという点。

 

また、過敏な人の中には、無垢の木材であっても木の種類によって喉の痛みや頭痛、吐き気などを

もよおすこともあるそうなので注意が必要です。

 

また、最近の住宅は機密性が高いことで、住居内の空気が停滞しやすい傾向にあることが、

シックハウス増加に繋がっていると言われています。

 

シックハウス症候群の症状

 

シックハウスの症状は、主に以下のようなものがあります。

 

  • 目に刺激・痛みがあり、チカチカする
  • 鼻水・涙・咳が出る
  • 頭痛・めまい・吐き気がする
  • 鼻や喉が乾燥したり、刺激や痛みがある
  • 脱力感・倦怠感・眠気
  • 皮膚が乾燥する・赤くなる・痒くなる
  • 呼吸困難
  • 集中力の低下 など

 

シックハウス症候群は新築の家やリフォームしたての空間で現れることが多く、頭痛や眩暈

といった直接的な症状から、不眠やノイローゼなど精神的な症状も現れることもあります。

 

症状としては化学物質過敏症にとても似ていますが、シックハウス症候群は体調不良をもたらす

室内環境から離れることで症状が治るのに対し、化学物質過敏症は一度発症するとごくごく微量の

化学物質や別の化学物質にも反応してしまうことがあるため、屋外の空気であっても症状が出る

ことがある、という点が異なっています。

 

 

シックハウス症候群の診断

 

シックハウス症候群も、化学物質過敏症と同様に保険診療が可能です。

 

診断基準は、以下の3点。

 

  1. 健康障害の発生の確認
  2. 汚染室内空間と症状の関連性の確認
  3. 室内空気汚染の確認

 

また、汚染された家・室内から離れると症状は軽減、消失し、再びその家に戻ると症状が

再現されることが、診断の重要なポイントになります(参照:笹川征雄、シックハウス症候群の

基礎と診断:日医雑誌 第129巻・8号、2003年)。

 

化学物質過敏症とシックハウス症候群の違い

 

化学物質過敏症とシックハウス症候群は、原因や症状に似通った部分はありますが、違う疾患です。

 

  • ・シックハウス症候群は屋内でのみ現れ、その場を離れると治るか、症状が緩和される
  • ・化学物質過敏症は発症するとごく微量な化学物質にも反応するようになる場合もある
  • ・シックハウス症候群の原因にはダニやカビも含まれる
  • ・化学物質過敏症は他人の香水など匂いに対して現れることも多い(香害)

 

化学物質過敏症の場合、家の外ではマスクをするなどの自衛をするしかありませんが、シックハウス

症候群は自宅であれば家の中の環境を自分でコントロールすることができます。

 

ただ、家の新築やリフォームなど大きな工事によってシックハウス症候群になってしまった場合には、

家自体の回復までにお金や時間がかかることも多いので、建材や家具選びには注意が必要です!

 

住宅での対策

 

普段の生活の様々な場面で、辛い症状に悩まされている化学物質過敏症の方々。

自分の家ではできるだけ安心して気持ちよく過ごしたいですよね。

 

ひいてはシックハウス症候群を防ぐことにもつながる対策を4つ、ご紹介します。

 

 

 

 1.化学物質の発生源を減らす

 

建材や家具・日用品などについて、化学物質の放散量が少ないものを選ぶことが重要。

 

塗料や接着剤は天然系で有機溶剤を含まないものを選びます。例えば渋柿や亜麻仁油などの自然塗料や、

壁のクロスを貼る工程で有機溶剤入りの接着剤ではなく、お米を潰して作られたでんぷん糊を使うなどの

対策が可能です。

 

壁仕上げ材はビニルクロスではなく、紙や布の壁紙や漆喰などの塗り壁、無垢の木仕上げを選び、

床材も天然木、コルク、天然リノリウムなど有害物質が発生しない素材を使用。

 

カーペットやラグも、化学繊維ではなくウールやジュート(麻)、コットンの天然素材を選びます。

 

さらに弊社では、一般的に安全だと言われている ”低ホルムアルデヒド(F☆☆☆☆グレード)”

であっても、「合板・集成材をいっさい使用しない」というこだわりを持ち、ホルムアルデヒド等の

化学物質:VOC(揮発性有機化合物)を持ち込まない家作りを徹底しています。

 

また、既存の家具や建材からのVOC発生を軽減する「エイブル工法」もおすすめしています。

 

 2.換気を行う

 

2003年の法改正以降に新築された住宅やマンションには「24時間換気システム」が備わっているので、常に換気扇を回して室内の空気の入れ替えに努めましょう。

 

また、2時間に1度の間隔で2か所以上の窓を開けて5分程度換気をするなど、室内の空気の入れ替えを意識した生活をすることが大切です。

 

ただ、室内での化学物質の放散がなくならない限り、換気が根本的な解決法ではないということも念頭におく必要がありそうです。

 

 3.リフォームする

 

根本的な環境改善のために、思い切ってリフォームやリノベーションするのも選択肢のひとつです。

 

実際、新築したばかりの家でシックハウス症候群を発症し、やむなくリフォームを依頼されるという

事例もあります。

 

また、長年暮らした家でも、蓄積された化学物質がキャパを超えて身体に不調が現れるという

パターンが少なからずあり、対策として建材や家具を見直してのリノベーションが有効です。

 

匂いや成分に過敏な人は、天然木の素材であっても木の種類によって体調不良が起こることがあります。

 

例えば、床材にどの木を使おうか迷った時に、使用する候補の木材をひとつづつ枕元に置いて、

体調に悪い変化がないかを確認するパッチテストを事前に実施。

 

身体に合った、安心して使える素材をあらかじめ厳選することができます。

 

自分や大切な家族が暮らす家だからこそ、安心安全で快適な空間にしたいですよね。

 

わたしたち磯﨑工務店はそんな家づくりのお手伝いができたらと思っています。ぜひご相談ください。